ITインフラ構築技術集

IP電話の最新トレンドである「SIP」とは

 

 IP電話(インッターネット・プロトコルを利用する電話)の普及に伴って、SIP(シップ)と言う用語をよく聞くようになりました。 SIPとはどんな技術なのかを解説します。

 相手先に電話をかけたり、通話が終わったあとに電話を切ったりするためには、通話の開始から終了までに決められた手順が必要です。 これを定義しているのが「呼制御プロトコル」です。
IP電話の代表的な呼制御プロトコルが、SIPH.323です。

 

SIPとは;
SIPは、「Session Initiation Protocol」の略で、IPネットワーク上でさまざまな音声、データ、画像などのマルチメディアの通信を行うためにアプリケーション間の関連付けを実行したり、関連を終了したりするために利用するのに欠かせない通信手順です。
Session(セッション)とは、アプリケーションの関連付けのことで、Initiation(イニシエーション)は、セッションを開始することを言います。
これらを行うための手順(プロトコル)が、セッション・イニシエーション・プロトコル、(セッション・開始・プロトコル)、すなわちSIPです。


H.323とは;
SIPより早い時期に標準化されたのがH.323です。
H.323は、音声、データ、画像の送受信をインターネット上で実現するための通信手順であり、標準化時期が早かったため、実装している製品が多く現在最も普及しています。 ただしH.323は複数の手順の集合体であるため、手順が複雑になるのが難点です。

 

表1 SIPとH.323との比較

  SIP H.323
標準化団体 IETF ITU-T
策定時期(最新版標準化) 1999年3月(2002年) 1996年11月(2000年)
目的 クライアント・サーバ間で通信セッションを開始するためのプロトコルとして策定 音声や画像などマルチメディア通信を目的として策定
ベースとなる技術 インターネット 既存の公衆網 (PSTN/ISDN)
手順 簡単 複雑
他のインターネット技術(HTTP,SMTPなど)との親和性 高い 低い
拡張性 高い 低い
データ記述形式 テキスト形式で記述 バイナリ形式で記述
通信方式 ピア・ツー・ピア ピア・ツー・ピア

IETF: Internet Engineering Task Force (SIPはIETFのRFC3261で最新版が規定されています)
ITU-T: 国際電気通信連合電気通信標準化部門
PSTN: Public Switched Telephone Network
ISDN: Integrated Services Digital Network 

 

SIPの特徴;
SIPは、「セッションの開始、終了」などの基本的な機能しか提供しません。
そのため、SIPを利用する際には下記のプロトコルなどと併せて使用することが前提となります。

・RTP (Real-time Transport Protocol):メディアの送受信、QoS制御
・RTSP (Real-Time Streaming Protocol):ストリーミングメディアの制御
・SDP (Session Description Protocol):マルチメディア・セッションの制御
・MEGACO (Media Gateway Control):PSTN網へのゲートウェイの制御

SIPは、基本的なセッション制御のみを行い、他プロトコルでその機能を補う形態を取っています。
このようなプロトコル形態を取っているため、SIPが単純かつ拡張性が高い理由でもあり、また特徴となっています。

 

セッションとは;
SIPで言うセッションとは、アプリケーション間の関連付けです。
IP電話の例で説明すると、電話は発信者と着信者の電話が接続されることによって通話ができるようになります。 つまり、発信者の電話アプリケーションと着信者の電話アプリケーションが関連付けされることで通話が成立します。 この関連付け(接続)のことを「セッション」と言います。

 

SIPサーバとは;
SIPサーバとは、SIPをベースにした呼制御をつかさどるサーバのことです。
基本となるのはプロキシ・サーバで、ユーザーのドメインごとに配置され、ネットワークにおける案内人、いわゆるDNSサーバのような役割をします。

呼制御サーバは、次の3つの機能にわかれています。

レジストラ機能(Registrar):

IP電話機の電話番号、SIPアドレス、IPアドレスの管理機能。(現在のアドレス等を管理する)
   ※ SIPアドレスは、一般的にユーザー名とドメイン名で構成されています。

プロキシ・サーバ機能(Proxy Server):

接続要求を他の呼制御サーバ等に転送する機能。
   ※ ユーザー認証、アクセス許可、アクセス制御なども行います。

 ・リダイレクト・サーバ機能(Redirect Server)

接続要求内容が変更されていた場合等において、発信者側呼制御サーバ(プロキシ・サーバ)へ正しい内容を返送し再アクセスを促す機能。(通信先の現在のアドレスを返答する)

 

コネクション型通信とコネクションレス型通信;

コネクション型通信とは;

 従来の電話では、電話をかけるごとに電話交換機が発信者側と着信者側の電話機との間に通信回線を接続(コネクション)し、接続が確認されてから通話が可能となります。 このように通信回線の接続確認が完了してから行う通信方式をコネクション型通信(回線交換型通信)と言います。
コネクション型通信は、通信回線が占有されるので確実な通信が行えます。 図1参照。

コネクションレス型通信とは;

 IP(Internet Protocol)では、通信相手との接続を確立することなく(コネクションレス)パケットを相手に送ります。 このような通信方式をコネクションレス型通信(パケット交換型通信)と言います。
コネクションレス型通信は、通信回線が占有されることがないので、多くのユーザーが通信回線を共有して利用することができます。 通信回線の接続確認等の手続きが不要なため、素早く効率よくデータを伝送することができます。 だたしネットワークの状態によりパケットが遅延したり紛失したりする場合があります。 図2参照。

 

【図1 従来の電話】

コネクション型通信

【図2 IP電話】

コネクションレス型通信

 

SIPの通信手順;
SIPによるセッション確立手順の概略を図3に示します。

【図3 セッション確立手順の概略】

セッション確立手順の概略

 

SIPが注目される理由とは;

 最近SIPが注目されているのは、IP電話、マルチメディア会議、チャットなど、IPネットワーク上でリアルタイムにマルチメディア通信を利用するアプリケーションが増えているためであり、SIPが提供する「セッション」がコネクションレス型通信を実現する手段として非常に優れているからです。
またSIPは、H.323に比べてシンプルなプロトコルであり、インターネット技術を基本としているため他のインターネトとの親和性も高く、製品への実装やシステムの構築なども容易で拡張性も高いことから、SIPを採用する通信事業者やベンダも増えて将来のスタンダード・プロトコルとしての位置を確立しようとしています。

 

SIPの問題点;

 SIPプロトコルの問題で、IP電話が相互接続できないことがあります。
これは、SIPの仕様が曖昧であるために実装者による解釈の相違が大きくて、相互接続ができなくなるという現状があります。 このような問題を解決するためのミドルウエアもすでに開発されていますので、世界中のSIPサーバと相互接続できるようになる日は近いと考えます。

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