緊急地震速報
2007年10月1日から、緊急地震速報の一般向けの提供が開始されました。この速報の意味をよく理解し、いかに活用して防災に役立てるかについて、考えてみましょう。
1. 緊急4. 問題点速報とは
地震警報システムとは、地震の初期微動を観測して、早い段階で対応をとることにより、被害を最小限に抑えようと開発されたシステムです。
1990年代後半 兵庫県南部地震などを契機に高感度地震観測網の整備を決定、高感度の地震計が日本各地に設置され始め、これらを応用した速報的な地震情報の提供が検討され始めました。
2004年2月 気象庁の「ナウキャスト地震情報」と防災科学技術研究所の「リアルタイム地震情報」を統合、「緊急地震速報」へと改編され、行政機関、交通、報道、
通信などの希望する機関に対して緊急地震速報の試験運用が開始されました。
2. 緊急地震速報の原理
地震が起こると、主にS波とP波と呼ばれる2つの地震波が同時に発生します。S波 は大きな揺れ(主要動)で被害を引き起こす地震波で、比較的ゆっくり伝わる波、 P波は小さな揺れ(初期微動 伝播速度約7Km/sec)のため被害を起こす地震波ではないものの、S波(伝播速度役4Km/sec)の約2倍の速さで伝わるため、この伝播速度 の差を利用して震源からの距離に応じてS波の到達時刻を予測し、これを高速な情報伝達網を使って地震速報を出すものです。
初期微動・主要動の情報は全国約1,000箇所(気象庁200、防災科学研究所800)に設置されている地震計から地震波形データを常時リアルタイムで気象庁に集められ、 これを解析・処理して同庁から発表される緊急地震速報は、気象業務支援センター を経由して利用者へ配信されます。
緊急地震速報は秒単位を争う情報であるため、その処理や伝達における遅延を極力少なくして主要動が到達するまでの時間を少しでも長くとる必要があり、配信システムやネットワークなどに高速化のための工夫がされています。
3. 速報の利用
既に、地方公共団体では2004年頃から試験運用を利用して、市町村防災行政無線
を使った、速報体制を運用しているところもあり、今後一気に増加すると予想されます。
各テレビ局では10月1日以降、この地震速報を流すとしており、また、携帯電話各社においても、緊急地震速報を受信できるようにするため、配信システム・基盤
をそれぞれ開発し、2008年発売の新機種からの受信機能搭載をめざしている緊急地震速報に対応した一斉同報配信基盤を開発することとしています。
さまざまな媒体から受信した速報にどう対応すればよいのでしょうか。
まず、「周囲の状況に応じて、慌てずに、まず身の安全を確保する」ことを念頭に
- 屋内では、地震の発生直後と同じように机の下に隠れ、頭を防護し、転倒物や飛散物から離れ、可能な範囲で火を消し、窓や戸を開けて避難経路を確保する。
- 商業施設、イベント会場など混雑する場所では、屋内と同様に頭を防護し、 転倒物や飛散物・看板や照明などの落下物から離れるとともに混乱を防ぐために 出入り口に押し掛けないこと、係員などの指示があればそれに従う。
- 屋外では転倒物や看板・照明や窓ガラスなどの落下物から離れ、できれば
耐震性の高い建物の中に避難する。加えて崖などの近くではがけ崩れや落石に注意
して、できるだけ崖などから離れることも求められる。
海岸に近い場合は、津波に備えて速やかに高台や建物の高層階に避難する。 - 自動車の運転中はまずハザードランプの点灯などで警告を行い、慌てずゆっくりと減速して、道路の左側に車を寄せて停止する。
バスや電車の中ではつり革・手すりなどにつかまってしっかりと体を支えられるようにする。
また、エレベーター内にいる際は最寄の階で止まるようボタンを押して、すばやくエレベーターから出る。
いずれにしても、慌てずに冷静に行動することが求められるため、事前に速報の受信を想定した訓練を行っておくことが必要です。
4. 問題点
地震の被害を最小にするという意味では非常に有効なシステムですが、次のような問題が残っており、利用する側にとっても注意すべき点があります。
- 速報発表から大きな揺れが到着するまでの時間は震源から各地点までの距離 に左右される(殊に直下型地震の場合、震源付近ではP波とS波がほぼ同時に地表に到達する)ため、速報発表が主要動の到着に間に合わないこともある。また、S波到達以前に発表されても、主要動までの時間は数秒〜数十秒しかないため、発表時 の対応が周知徹底されていないと、群衆が非常口に殺到するとか、速報を受けた自動車が急ブレーキをかけて玉突き衝突を誘発するといったパニックを引き起こす可能性がある。
- 一部行政機関向けのものを除き、配信が気象業務支援センター経由となっており、気象警報などのような通信・放送機関への直接送信とはなっていないことから、末端ユーザーへの配信が遅延する可能性がある。殊に「気象庁→気象業務支援センター→民間気象事業者→通信事業者(携帯電話など)→ユーザー」の経路をとる場合、致命的な遅れ(S波到達後)が生じうるとの指摘もある。
- 現状では予想震度に±1程度の誤差が避けられない等の限界があり、特に群発地震では、複数の地震が重なり初期微動が正確に観測できないため、誤差が大きく なる。
- 「緊急地震速報の受信装置の設置が義務化されている」などと偽って機器などを販売する悪質な訪問販売業者も出てきており、住宅用火災報知機の設置義務化時などと同様に被害が出ることも懸念されている。
以上述べたとおり、幾つかの問題を抱えながら、一般向け速報の提供がスタート
したわけですが、このシステムを活用し地震災害から市民を守るためには、いかに
早く初期微動を検知し、処理し、伝えるかにかかっていると言っても過言ではありません。高度な情報処理と、高速な通信技術の上に成り立っており、今後の更なる改良が必要であることはもちろんですが、人が介する部分でのスピードアップも
不可欠です。
