手のひらに載る携帯基地局「フェムトセル」
「フェムトセル」とは、家庭やオフィス内の狭いスペースに設置ができる超小型の携帯電話基地局のことです。
2007年度末から2008年初めにかけての実用化を目指し、今、世界中のベンダーや通信事業者が競い合って開発を進めています。日本でもソフトバンク・グループが
実証実験を公開し(6月29日発表)、来春のサービス開始を予定するほか、NTTドコモも、この秋に電波の届きにくい高層ビルや地下街などを対象に運用開始を予定しています(7月10日発表)。
このほか、KDDIやイー・モバイルも検討を進めていることを明らかにするなど、
国内のすべての携帯電話事業者が「フェムトセル」の取り組みを始めています。
今回は、この「フェムトセル」についてご報告します。
1.「フェムトセル」とは。
携帯電話には「セル」という概念があります。これは、電波を発して携帯電話と通信を基地局のカバーする範囲のことです。携帯電話のセル、つまり1つの基地局でカバーする範囲は、半径1km〜数km(マイクロセル)が一般的ですが、「フェムトセル」でカバーされるのは、たとえば家の中や小さなオフィスなど、せいぜい数十m程度のエリアです。
フェムト(Femto)とは、単位に冠して 10-15、すなわち「1,000兆分の1」の意を表す接頭語です。実際にマイクロセルよりもフェムトセルが10億分の1もカバー範囲が小さいわけではありませんが、言葉の雰囲気として「非常に小さい」セルをあら
わすために、フェムトという語句を使っているようです。
一般に「フェムトセル」は、家庭内に引き込んだADSLや光ファイバーなどの商用
のブロードバンド回線経由で携帯電話網と接続します。ちょうど無線LANルータを
設置するような感覚で基地局の設営ができることになります。
このようなサービスは、固定/移動融合(FMC:Fixed・Mobile・Convergence)に
対し、固定/移動代替(FMS:Fixed Mobile Substitution)と呼ばれ、欧州の携帯電話事業者を中心にサービスが始まっています。
「フェムトセル」をユーザに販売するのか、無償貸与するのかは、携帯電話事業者の判断になりますが、気になる価格は無線ルータ並にしたいというのが関係者の意見のようです。
2.どんなメリットをもたらすのか。
ユーザにとっては、屋内で携帯電話をつながりやすくできるほか、家庭内に置いた「フェムトセル」を独占できるため、複数ユーザでシェアする屋外の基地局と比べて通信速度の向上が見込めるようになります。
一方、携帯電話事業者にとっては、建物内などこれまで基地局が設置しにくかった場所にエリアを拡大できるほか、サービス提供のためのバックボーンをリーズナブルなかたちで強化できる、というメリットがあるため、「フェムトセル」経由の安価な通信サービスが登場する可能性もあります。
3.実現する上での技術的なポイントは。
本体を小型化する以外に、
(1).「フェムトセル」と携帯電話コア・ネットワークとの接続方法。
(2).「フェムトセル」経由のデータ・トラフィックのコントロール。
(3).商用ブロードバンド回線を活用する上でのセキュリティやQoS。
(4).既存の基地局との干渉回避。
(5).「フェムトセル」と既存基地局とのハンドオーバー。
(6).「フェムトセル」の管理機能。
について、各携帯電話事業者が技術的な検討を進めてきており、ネットワーク・ アーキテクチャーの違いがサービスに反映される可能性もあります。
4.日本では、制度面に課題が残る
現行制度上では、「フェムトセル」は既存の基地局と同様の位置付けになるため
(1).1局毎に免許申請が必要。
(2).ユーザが加入する回線経由で携帯電話網と接続することが禁止されている。
(3).回線の途切れは許されない。
(4).無停電電源設備(UPS)が必要。
(5).電気通信主任技術者による設置や管理、監督が必要。
(6).持ち運びや、電源のオン/オフはできない。
といった条件が課せられます。
市場投入を表明したNTTドコモは、「フェムトセル」をマンションの高層階や地下
などの携帯電話の電波が届きにくい「不感地域」の解消(FOMA屋内エリア品質向上)
に活用する意向です。
あくまで、自社回線を用意し、既存の基地局と同じ扱いで運用をスタートするとしています。
一方のソフトバンク・グループは、総務省に制度改正を働きかけるとしています。
総務省のモバイルビジネス研究会が出した報告書案(6月29日)には、「07年度末を目途に、フェムトセルの取扱について一定の結論を得ることが適当」という一文が含まれており、今年度末には総務省で、「フェムトセル」の議論が始まることになりそうです。
